◆第48回スプリンターズS・G1(5日・新潟競馬場、芝1200メートル、良)
12年ぶりに新潟で行われた第48回スプリンターズS・G1(5日、芝1200メートル)は、13番人気のスノードラゴンが4コーナー10番手から直線で差し切って優勝。鞍上の大野拓弥騎手(28)=美浦・フリー=とともに、G1初制覇を飾った。2着は、半馬身差でストレイトガール、3着はレッドオーヴァルだった。1番人気に推されたハクサンムーンは、精彩を欠き13着に終わった。
デビュー10年目の大野が、10度目のG1挑戦で悲願を成就させた。12年ぶりのG1開催に詰めかけた新潟の大観衆の歓声の中、スノードラゴンは、最後の18番目にゲートイン。大外枠からスタートを決めると、他馬を前に置き、中団後方の外でリズム良く運んだ。直線。馬場の中央へ導き、右ムチを振り下ろすと、芦毛の迫力の馬体を揺らしてグングンと加速。残り200メートルで先行集団に並ぶと、勢いそのままに半馬身抜け出し、人馬とも念願の初タイトルを手にした。
「素直にうれしいですね」と大野は満面の笑みで喜びを表現。「ゲート裏でもゾクッと来たほど歓声がすごくて、馬もそれにピリッとしたのか、いつもよりいい位置につけられた。いつもなかなか手前を替えられないが、スパッと替えてくれた。勢いが違っていたので勝てるかなと。すごい盛り上がりの中、勝てて良かったです」と興奮気味に振り返った。
着実に実績を積み上げ、ようやく手にした勲章に「G1レースに憧れて、この世界に入りましたし、10年かかりましたが、勝つことができて本当に良かった。ローカルと違って、中央で乗るようになったことで、意識が変わってきましたし、勝ちたいと思っていたので」と改めて勝利をかみしめた。
13番人気で大仕事をやってのけたスノードラゴン。12年前に同じ舞台、同じレースで2着に敗れた父アドマイヤコジーンの雪辱も見事に果たした。「以前は善戦マンだったが、蛯名騎手の進言で脚をためる形にして結果が出た。これからもっと活躍できる。この後は、香港(スプリント)に登録すると思います」と高木調教師が話せば、鞍上も「芝ではまだ底を見せていないし、まだまだタイトルを取れる馬。海外でも結果を出したい」と未来の可能性に思いを馳せた。充実期を迎えた遅咲きの6歳馬が、次に目指すのは、世界のスプリント王だ。
(上倉 健)
◆大野 拓弥(おおの・たくや)1986年9月8日、埼玉県生まれ。28歳。デビューした05年に、民放競馬記者クラブ賞(関東新人騎手賞)を受賞。JRA通算272勝(5日現在)。今回が6度目の重賞制覇。G1は10度目の挑戦で初勝利。趣味は競馬ゲーム。血液型B。
【優勝馬メモ】
◆性齢 牡6歳の芦毛。
◆血統 父アドマイヤコジーン、母マイネカプリース(父タヤスツヨシ)。父の産駒のG1勝利は、07年のこのレースを制したアストンマーチャン以来、2頭目。
◆戦績 35戦8勝(うち地方2戦0勝)。重賞初勝利。
◆総収得賞金 優勝賞金9500万円を加えて、3億1891万円(うち地方647万円)。
◆デビュー35戦目 G1初勝利までに要したレース数では、2番目の記録(84年のグレード制導入後)。最も多いのは、ショウワモダンの39戦目(10年安田記念)。
◆13番人気 G1に格上げされた90年以降、2ケタ人気の馬が優勝したのは、00年ダイタクヤマト(16番人気)以来2度目。
◆関東馬 01年トロットスター以来の勝利。
◆馬名の意味 ユリ科の常緑多年草。
◆高木登調教師(49) 06年開業で、GI初勝利。重賞は3勝目。
◆生産者 北海道新冠町のイワミ牧場。
◆馬主 岡田牧雄氏。
スプリンターズS結果
1着 スノードラゴン
2着 ストレイトガール
3着 レッドオーヴァル
スプリンターズステークス2014年動画